オフグリッド・ハウスって?

オフグリッドハウスって大変ですか?

最近「オフグリッド」という言葉をよく聞きませんか。電気代がゼロになるとか言うけど、何か大変そう、という感じもします。そこでオフグリッドハウスについて少し考えてみましょう。オフグリッドの「グリッド」とは元々は網目のこと、電気、水道、ガスなど網の目のように張り巡らされたライフラインのインフラのことです。そこからのOff、つまりそれらに接続しないと言う事です。つまりオフグリッドハウスはエネルギーや水(特に電気)を公共インフラに接続せず自給自足を目指す住宅です。「そんな事って簡単にはできないでしょ?」「すごく節約して、我慢しながら生活するのですか?」きっと誰でもそんなふうに思うことでしょう。

オフグリッドハウスは案外簡単です

オフグリッド、オフグリッドと言っても実は非常に多様です。電気はもちろん、給水排水、通信から食料自給まで、たとえ山奥や原野の一軒だけでも完全自給できることを目指す究極のオフグリッドハウスもあれば、オール電化と太陽光発電でエネルギーだけは自給するということを目指すものもあります。そんな中、後者ぐらいなら意外と簡単に可能ですし、少しプラスアルファの準備があれば災害時にも心強いものになります。実はオフグリッドハウスはゼロエネルギーハウスの発展型なのです。少しゆる〜く考えて、トライしてみても良いと思います。

オフグリッドハウスにもいろいろな考え方があります

一口にオフグリッドハウスといっても、自称、他称さまざま、言った者勝ちという面もあります。同じオフグリッドでもどこに力点を置くか色々な考え方があるからです。勝手に分類してみると大きく分けて三つに分かれると思います。一つは「CO2削減重視型」もう一つは「レジリエンス型」、そしてインフラの無い人里離れたところに立つ「ぽつんと一軒家型」です。

・地球環境を守るために「CO2削減重視型」

電気を自給自足して、エネルギーに関してCO2の排出ゼロを目指すのが環境重視の視点からのオフグリッドハウスです。十分な断熱とパッシブデザインを取り入れた、高い温熱性能のゼロエネルギー(ZEH)可能なレベルの住宅なら、5kw程度の太陽光発電があれば年間のエネルギー使用量は賄えますが、買電しない完全な自給自足のためには蓄電池などで昼間発電した電気を溜めて、発電しない夜間などの電気を賄う必要があります。昼間にお湯を沸かす「おひさまエコキュート」や太陽熱で直接お湯を作る「太陽熱温水器」も省エネの大きな補助になりますが、悪天候が何日か続く時もありますから、どうしてもかなり大きな蓄電池がなければ完全な自給自足は難しく、その点で結構ハードルが高くなります。

しかし、そのような何日も続いて発電できない事態は年間で数回程度で済むので、そこまで大きな蓄電池ではなくても10〜15kwhの蓄電池があれば本当に電気が不足することはあまりありません。念の為電力会社と接続はしておくがほとんど電気を買うことはしない「ほぼオクグリッド」なら大きなコストを掛けなくても十分可能です。それをオフグリッドハウスと言えるのかという声もありますが、できるだけ電気を買わずにCO2排出をゼロに近づけるというのなら、オフグリッドという言葉にこだわらなくても、大きな意味があります。

 

・地震や異常気候に耐えられるようにしたい「レジリエンス型」

オフグリッドとするもう一つは激甚災害や気候変動に耐えるレジリエント性能を重視する視点です。首都直下型や東南海トラフ型などの地震の危険性も迫っていますし、地震と同時に富士山などが噴火する可能性も否定できません。地球温暖化が進み激甚災害もますます増えそうです。そのような事態になってライフラインのインフラがダウンした時は電気だけ自給できても、水がなくてはどうにもなりませんし、もちろん食料も必須です。レジリエンスを考えるなら電気だけでなく広い範囲での対策を考えなくてはいけませんから、電気だけのオフグリッドよりさらにハードルは上がります。非常時でも日常生活と同等の暮らしを確保するというご要望に応えた超レジリエントハウスの例がトップの写真の家(別荘)ですが、10kw近い太陽光発電と15kwhの蓄電池にプラスしてV2Hのシステムで電気を確保しています。給水は井戸が不可能な土地のため雨水利用で、渇水期に備えて2ヶ月分40トンもの貯水タンクを備えています。食料も自給を目指し山の中の敷地に農地まで確保していますが、そこまでするのはとても一般的とは言えません。レジリエンスを考える場合は、何から何までというのは難しいので、最低限これだけは必要という視点から現実的な対応を考える必要があります。なお災害に備えるためには建物が壊れてしまっては元も子もありませんから耐震性も重要で、耐震等級3を確保するのは絶対条件だと思います。

・いやでもオフグリッドにせざるをえない「ぽつんと一軒家型」

全くインフラが整っていない場所に建てようするなら、いやでもオフグリッドとするしかありませんが、これはちょっと特殊なケースですね。極めて少数でしょうから、本気で考えなくても良いかもしれませんが、結構示唆に富んだケースです。電気は太陽光発電での自給自足は比較的容易です。よほど大きな蓄電池容量でないと一時的な不足の心配はありますがそれは節電して耐えるしかありません。燃料としては、薪は補助に使えます。太陽熱温水器も活躍しそうです。水は湧水、谷川の水、井戸、雨水あたりでしょうか。いずれにしてもあまり便利な生活は期待できそうもありませんが、このタイプは完全にオフグリッドですから食料が確保できれば常に自給自足が可能で災害にも強く、実現可能な究極のレジリエントハウスとも言えると思います。そして山小屋のような場合はその不便さも楽しみのうちです。実はここがポイントのようにも思います。多少の不便はむしろ楽しんでしまう姿勢、自然と対話しながら暮らす楽しさ、やはりオフグリッドの本質は楽しむことにあるのかもしれません。

 

実現可能なオフグリッドハウスとは

では普通の宅地で誰でも実現できるオフグリッドハウスというのは、どんなところを目指せば良いのでしょうか。結論から言えば、「ほぼオフグリッド」に可能な範囲で災害対応をプラスするのが正解だと思います。

「基本になるのは高性能住宅+太陽光発電」

建物の温熱性能や耐震性などの基本性能が大事なのは、オフグリッドに限ったことではありません。高断熱のパッシブデザインなら少ないエネルギーで暖冷房が可能になりそれ自体でかなり省エネですし、災害時も空調がなくても程々の温熱環境が維持できます。そのためにイニシャルコストが少し余計に掛かっても、快適さに加えてランニングコストが減ることから少し長い目で見ればむしろ経済的です。長持ちのする住宅なら建物寿命よりはるかに短い期間で元が取れます。スペックとしては「断熱等級6以上」の性能は必須と言えます。
太陽光発電についても断熱性能が十分なら比較的少ない太陽光パネルで年間のエネルギーは賄えますし、最近の高騰する電気代を考えればイニシャルコストは10年ほどで楽に回収できます。
したがって「高性能住宅+太陽光発電」はランニングコストを含めて考えるとコスト面でも有利で、これからの住宅の必須のスペックです。

「蓄電池が悩ましい」

太陽光発電は日射がある時しか発電しませんから、オフグリッドのためには日射がない時にも電気が使えるように電気を貯める蓄電池は必須となります。ですが、コスパという観点からは蓄電池はまだまだ高価で経済性だけを考えるとペイしないと言えます。しかし電気代が今後さらにアップしていくなら状況は変わってきますし、非常時の安心を考えると違った答えになります。完全にオフグリッドにしようと思うと大きな容量の蓄電池が必要なのでイニシャルコストが嵩みますが、年間何日かは電力会社から電気を買うことを良しとして蓄電池の容量は程々にしておく「ほぼオフグリッド」なら現時点での選択として十分現実的だと思います。

「ほぼオフグリッドで良いじゃないか」

ほぼオフグリッドならランニングコストも考慮に入れれば通常の住宅からのコストアップもゼロに近いですが、ほとんど電気を買わないで済み、CO2削減にも大きく貢献できます。そして同時に災害時にも電気が使える安心感があります。水は井戸が可能な土地なら意外と選択肢としてはアリですが、せめて市販の200L程度の雨水タンクがあればずいぶん違います。また給湯器はエコキュートとすれば常に300L以上の綺麗な水(あるいはお湯)が溜まっている仕組みですから、雨水タンクと合わせて500L以上の水があれば災害時には心強いです。食料や救急品などの備蓄はもちろん必要ですがそれは災害時を想定した一般的な備えとして用意すべきもので、そのぐらいの事なら十分現実的に可能です。断熱性能の優れた住宅(断熱等級6以上)にプラスアルファの設備(太陽光発電と蓄電池)を加えればCO2排出はほぼゼロで災害時にも強い「ほぼオフグリッド・ハウス」が実現可能です。

オフグリッドハウスを楽しもう

以上のように、オフグリッドハウスは「ほぼオフグリッド」で良いとすれば、それほどハードルの高いものではありません。十分な断熱性能の高性能住宅に太陽光発電を載せるのは今や快適さだけでなく経済性を考えても必須と言って良い選択肢ですし、そこに蓄電池をプラスすれば「ほぼオフグリッド」が可能になります。住宅の設備としてはそれだけのことです。あとは特別な生活を強いられるわけではなく、少し環境問題を意識して暮らし、災害に備えた多少の備蓄をすることで、CO2排出ゼロ、電気代ゼロ、災害にも強いオフグリッドハウスが出来上がります。オフグリッドハウスは太陽の恵みを感じられる住宅です。自然の営みを肌で感じながら暮らす楽しさを存分に味わうことができます。

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