70万円の補助金・東京ゼロエミ住宅ってなに?

東京都が「東京ゼロエミ住宅」と言うネーミングで省エネ住宅の仕様を発表しました。その普及に向けて補助金も用意されるようです。「東京ゼロエミ住宅」とはどういうものでしょうか。
(この記事は2019年の初めに書いたものですが、2021年時点の状況を最後に加筆しました)

目標はエネルギー消費を30%以上減らすこと

東京都では2030年までに住宅のエネルギー消費を30%減らすという目標を掲げています。この達成のためには住宅の省エネ化が急務ですが、なかなか進んでいないのが現状です。そこではっきりした目標を示し、達成に向けて推進したいと言うことで1戸あたり70万円という補助金も設定されました。

計算しなくても分かりやすい仕様規定がある

省エネ住宅がなかなか普及しない理由はいろいろあり、省エネ住宅の快適さやメリットが理解されていないと言う面も大きいのですが,省エネ計算が誰でも簡単にできるわけではないというのも大きなポイントです。そこで今回の「東京ゼロエミ住宅」では、計算しなくてもこの通りの仕様で作ればよいという「仕様規定」が盛り込まれました。計算で省エネ性を検証する「性能規定」もありますが、取っつきやすい仕様規定があることは普及に大いに役立つと思います。

ではどの程度の性能が求められているのでしょう

東京ゼロエミ住宅で求められている事は大きく分けて2つあります。

・断熱性能を上げる
一つ目は建物そのものの性能を上げること、具体的には壁や屋根などをしっかり断熱することと、高性能な断熱サッシを使うことです。壁や屋根の断熱については一般的な工法である充填断熱で無理なく上げられる性能に留め、サッシは防火の点を考慮し実際的で無理のないアルミ樹脂複合タイプの最高レベルとして最低限の外皮性能を確保する事になっています。計算による性能規定の場合はUa値0.7以下としており、長期優良住宅の省エネレベル0.87よりはかなり高性能ですがZEH(ゼロエネハウス)の条件である0.6よりは少し劣ります。

・出来るだけ省エネタイプの設備機器を使用する
一つ目で建物の性能をあげた上で、できるだけ省エネタイプの設備機器を使用することで、標準的な住宅と比較して一次エネルギー削減率30%以上としています。具体的には空調はヒートポンプを使った高効率のエアコン、給湯器もヒートポンプのエコキュート、ガスの場合はエコジョーズなどです。照明はもちろんLED、その他に省エネ節水タイプの水栓、断熱浴槽、ヘッダー方式の配管などきめ細かく指定されています。

全体の印象としては、断熱については充填断熱、サッシはアルミ樹脂複合として最低限の外皮性能を確保したうえで、設備については全般にわたって省エネ性能の高いものを求めており、外皮性能は現実的なところでのほどほどの性能アップをはかり、後は省エネ設備に頼っているというところです。

補助金は使える?

 さて、では補助金はどうでしょうか。とりあえず一件あたり70万円、1500棟分の予算が用意されるようです。東京都の一戸建て住宅の着工件数は29年度で約1万8千戸ですから、12戸に1戸の割合になります。これなら結構行けそうですね。なお、具体的な募集要項などはまだ発表になっていませんから、スケジュールなど別の要素で使えないケースも考えられます。建物の内容については、この内容ならSURの標準仕様で楽にクリア出来ますし、特に問題はなさそうです。

ゼロエミ住宅のその後(2021年6月)

その後、SUR都市建築事務所では、竣工した住宅1棟でゼロエミの補助金を受けており、現在工事中の3棟も審査は通っていて竣工すれば補助金が出る予定です。金額は一件あたり70万円プラス太陽光発電1kwあたり10万円なので合計100〜140万円程度です。申し込んでも抽選になるのですべてではないもののかなりの確率で当選しています。ただし今年度からは補助金額が70万円から50万円に減額になっていますが、太陽光発電については変わらずですし、今後も大いに使える補助金だと思います。

これは第一歩

今回の「東京ゼロエミ住宅」、第一歩としては意味のある施策だと思います。これで省エネ住宅に対する意識が少しでも高まってくれればよいですが、エネルギー削減率は30%ですからゼロエネにはほど遠いですし、分かりやすくするためとは言え単に断熱をあげて省エネ設備を使うというのでは、あるべきエコハウスにはかなり遠いものです。いずれはしっかりとしたパッシブデザインで自然エネルギーを利用するという方向も折り込んで、創エネ設備も設置し本当のゼロエネハウスにして行く必要があると思います。

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